デュアルブート環境から、Primary MasterのHDDを取り外す問題
WindowsXP起動プロセスの概略と環境移行の問題点
2 Windows環境の移行の準備
ハードディスクの領域設定
不要ファイルの削除とシステムドライブの最適化
3 現状のシステム構成を前提とした移行の試み
デュアルブート環境からWindows98を外す
Secondary slaveドライブをPrimary masterドライブに変更
新しいSerialATAハードディスクに環境移行
4 環境移行の方法論の要点
4-1 ドライブレター変更方法と留意事項
4-2 BOOT.INIファイルの記述内容と修正方法
4-3 Primary masterハードディスクを外すリスク
4-4 新しいハードディスクに引越しする方法論
1 Windows環境の移行の問題点
現状は、Windows98とXPのデュアル環境であり、最終的にはPrimaryのMasterに接続されたハードディスクを取り外す、つまり以前のC:ドライブがなくなりドライブ構成が変わることから、次のような面倒なことが起きます。 (1)Windowsの[バックアップまたは復元ウィザード]は異なるドライブへの復元は制約がある。 (2)C:ドライブがなくなり、その起動プロセス情報がなくWindowsが起動しない。 (3)NTLDR(OSローダー)が読むboot.iniファイルの書換えをしないとWindowsが起動しない。 (4)ハードディスクを外しても、ドライブレターが歯抜けとなりC:ドライブが消えてしまう。 (5)Windowsがインストールされているシステムドライブのドライブレターの変更が難しい。 起動プロセスの面だけでも以上のように問題山積であり、単純にWindowsがインストールされているシステムドライブをバックアップして、新しいドライブにコピーしても起動しません。 (1)のWindowsのアクセサリのシステムツールとして用意されている[バックアップまたは復元ウィザード]では、レジストリ、システムファイル、ブートファイルなどのシステム状態ファイルもバックアップでき別の場所に復元することも可能ですが、システムの復元でレジストリが正常な状態に戻らない場合に、元々の場所に復元するためのツールですから、新しいドライブに復元しても正常に起動できないのです。 (2)と(3)の起動プロセスのトラブルは、パソコンの起動、そのOSであるWindowsの起動の仕組みの問題です。 パソコンの電源を入れるとBIOSが起動し、BIOSで指定されている起動デバイス(使用中のパソコンは一般的にはハードディスクのC:ドライブ)からOSを起動します。 ハードディスクが起動デバイスでWindowsXPを起動する過程を少し詳しくみると、BIOSはハードディスクのC:ドライブの先頭セクタにあるMBR(マスター・ブート・レコード)を読み込み、パーティション情報を取得し、アクティブな基本領域のブートセクターを読み込み、ブートセクターのNT IPL(InitialProgramLoader)は、OSローダーNTLDRを読み、NTLDRは「boot.ini」ファイルを読み込み、デュアル環境では起動OSの選択画面を表示させるという順に起動プロセスが進みます。 <WindowsXP起動プロセスの概略> |
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上の図はWindows環境の移行のための要点のみ記した概略図ですが、つまりPrimaryのMasterに接続されたハードディスクを交換するとMBRとブートセクターの修復が必要であり、「boot.ini」ファイルの書き換えが必要となります。 なおNTLDRは、その名前からも元々はWindowsNT系のOSのローダーであり、Windows98のみインストールされているパソコンでは使われていません。 (4)と(5)のドライブレターのトラブルは、ハードディスクの管理、パーティションを切ったドライブのファイルシステムとドライブ構成の問題です。 WindowsXPでは、NTFSファイルシステムによりドライブをフォーマットして使うことが一般的ですが、Windows98とXPのデュアル環境ではWindows98ではNTFSファイルシステムのドライブが扱えません。そのため、現在Windows98をインストールしてあるPrimaryのMasterに接続されたハードディスクは、FAT32ファイルシステムでフォーマットしています。 メインのパソコンのパーツ構成では、既にWindows98はNICのドライバが対応してないことに加えて、SerialATAハードディスクを外さないと起動しなく不便なため、この際デュアル環境はあきらめてWindowsXPのシングル環境に戻すことにし、PrimaryのMasterのドライブを外すことにしました。 なおWindowsXPの設定は旧ドライブ構成を前提としており、WindowsXPが起動しても、システム設定や個人設定の修正が必要です。 |
2 Windows環境の移行の準備
(1)ハードディスクの領域設定 今回は、購入してすぐにSeagateのハードディスクは、SerialATAケーブルで接続し、パーティションを4つに切ってフォーマットは済ませています。<参照:DVD編集・TV録画パーツの増設> 領域の種類は、基本領域と拡張領域とあり、拡張領域には論理ドライブを作成でき、アクティブな基本領域一つと、拡張領域内に論理ドライブを3つに仕切っています。 メインマシンの他のハードディスクも、基本領域1つと拡張領域に論理ドライブを1〜3作成するという昔ながらのドライブ構成になっていますが、OSをインストールしないデータ用のハードディスクをNTFSファイルシステムで使用する場合は、基本領域を設けず全て拡張領域として論理ドライブを分けることも可能です。 Windowsでは、基本領域、アクティブな領域、拡張領域内の論理ドライブという種類によって、ドライブレター(文字)を振るときに区別して優先順を決めるため、いっそのこと全て拡張領域の論理ドライブのみのハードディスクにすると便利な面もあります。 Windows98でFAT32ファイルシステムで使うときは、FDISKを使用して領域設定をしてましたが、FDISKコマンドでは、基本領域は一つしか作成できないという制約があります。 しかしWindowsXPのディスクの管理でNTFSファイルシステムを使う場合は、基本領域は4つまで作成できるし、拡張領域内に論理ドライブのみ設けることもでき、自由度が高いので、新しいハードディスクのみ複数台使うときは、先々のことを考えて領域設定すると良いでしょう。 今回は1台追加するだけであり、全ハードディスクを領域設定し直すわけにはいかないので、現状のドライブ構成が前提となることは止むを得ないのです。 (2)不要ファイルの削除とシステムドライブの最適化 ハードディスクを扱うときは、万一に備え重要なファイルをバックアップすることは基本ですが、システムドライブのバックアップは、事前にそのドライブの不要なファイルを削除しておくことも必要な手順でしょう。 不要なファイルとして容量が大きいのは、ごみ箱、IEやその他のアプリケーションの一時ファイルですが、マイドキュメントやデスクトップのフォルダ内のWebサーフしたときの保存ファイルやデジカメの画像ファイルなども、取って置くのなら別のドライブにあらかじめ待避させておき、システムドライブをスリム化しておくと、バックアップの時間が短縮できます。 Windowsの[バックアップまたは復元ウィザード]や[ファイルと設定の転送ウィザード]は予想以上に処理時間がかかり、特に[バックアップまたは復元ウィザード]は、何も準備しないでいきなり処理すれば、気が長い人でも嫌になります。 [バックアップまたは復元ウィザード]の自動システム回復ウィザードでシステムドライブをバックアップする処理時間は、不要ファイルを削除し、ドライブの最適化を実行した後では、約20分(使用領域6.18GB:ハードウェアのスペックにもよります)で完了しました。 |
3 現状のシステム構成を前提とした移行の試み
この7月に、Seagate製のSerialATAハードディスクを追加し、現状のハードディスク4台のドライブ構成及びWindowsのインストール状況は、次表のとおりWindows98とXPのデュアルブート構成です。 <ドライブ構成:基本領域と拡張領域内の論理ドライブ>
後は、アプリケーションが動かないものが、どの程度あるのかという問題です。 |
なお、ついでに説明すると、仮にSeagateのハードディスクの基本領域に新規インストールしたWindowsXPのドライブレターは次のようになっています。
BIOSのHDDの順番(MaxtorはPrimary
master、SeagateはThird IDE Master、日立IBMはForth
IDE Master)を前提に、まず基本領域からドライブレターをC:→D:→E:と振り、その後、論理ドライブのドライブレターをF:〜M:まで振っています。
Windowsフォルダのコピーに使うXCOPYは、MS-DOSのコマンドであり、Windowsを起動させないでMS-DOSで処理するのが本筋ですが、Windows98の起動ディスクではNTFSファイルシステムのドライブが見えないこと、WindowsXPのCD-ROMから回復コンソールを立ち上げても、XCOPYは認識できないため不可です。
以上で、引越しは完了で、WindowsXPは正常に起動しました。 |
4 環境移行の方法論の要点
上述のこれまでの試みの結果の要点を整理してみました。 |
4-1 ドライブレター変更方法と留意事項
・ BIOSが認識するIDE接続順の物理的なハードディスクの順番と、Windowsが振るドライブレ ターは異なります。 ・ Windowsをインストールしたときに一旦振ったドライブレターは、ハードディスクを追加して も変更されず、新しいハードディスクには空いているドライブレターを振ります。 そのため既存のアプリケーションが動作しなくなることがないのです。 ・ 同じパソコンでも、再度WindowsXPを新規インストールをし直せば、新たにドライブレター を振ります。 ・ 下の画像は、WindowsXPの「ディスクの管理」の画面ですが、左側は、MaxtorのHDDの 前から使用していたWindowsXPで、右側は仮にSeagateのハードディスクにインストールし たWindowsXPのものです。いずれも選択して起動できます。 つまりWindowsのドライブレターは、そのWindowsにとってのドライブレターにすぎないの です。 |
・ ドライブレターの変更は、「ディスクの管理」(上の画面)で可能です。 システムドライブ以外のドライブレターは、簡単に変更できますが、何かトラブルがあれば 戻せるように、旧ドライブ構成を控えておくと良いでしょう。 各種アプリケーションソフトのインストールは、Windowsがインストールされているドライブ のProgram Filesなどにインストールすることが一般的であり、システムドライブのドライブレ ターを変更しなければ、おそらく大きな問題はないでしょう。 ・ システムドライブのドライブレターは、「ディスクの管理」では変更できず、レジストリの書き 換えで変更することになります。 しかし、レジストリを書き換えると起動不可となり、WindowsXPの修復インストールで起動 できるようになっても、多くのアプリケーションに不具合が生じ、修正が大変です。 ・ デュアルブート環境で、元々がC:ドライブ(QantumのHDD)にWindows98、D:ドライブ (MaxtorのHDD)にWindowsXPという状況から、QantumのHDDを取り外したため、C:ドライ ブが空きとなったため変更しましたが、システムドライブのドライブレターの変更はトラブル の原因となるだけのことで止めるべきでしょう。 |
4-2 BOOT.INIファイルの記述内容と修正方法
・ boot.iniファイルの書き換えは、Windows上で可能です。 「ファイル名を指定して実行」から「C:boot.ini」とタイプすると、メモ帳でファイルが編集で き、下の[boot loader]と書かれたファイルを修正し、上書き保存して完了です。 なお、C:ドライブのWindowsXPでなく、他のドライブのWindowsXP上でも編集可能です。 ただし、「C:boot.ini」と必ず「C:」を付す必要があります。 またWindows上では、「C:\boot.ini」の「\」は省くことができます。
partitionも各ハードディスク毎にpartition(1)から順番となります。 ・ 通常は、WindowsXPを新規インストールすれば、他のドライブにインストールされている Windowsを調べ、何もしなくてもOSを選択起動できるように修正されます。 ・ 今回のようにデュアルブートをシングルブートに戻したり、XCOPYでWindowsフォルダを 引越して使おうというときには、OS選択画面の表示を変更するために修正が必要です。 ・ なお上の事例は、BIOSの接続順に3番目のハードディスクrdisk(2)の第1パーティションに あるWindowsXPを選択して起動できるように、赤字の一行を追記したものです。 詳しくは3-(2)を見てください。 ・ その他デュアルブート環境などで、よく変更するケースは次のような場合です。 OS選択画面の表示時間の30秒が長いと思えば、timeout=30 を timeout=15 として表示 時間を15秒に短縮できます。 シングルブートで timeout=0 とすれば、OS選択画面は表示されません。 デフォルト、つまり選択しなくてもtimeout後に起動するOSを default=multi(0)disk(0)rdisk(1) partition(1)・・・の行の rdisk( ) および partition( ) の( )内の番号を変えることにより変更 できます。 上の事例では、デフォルトでrdisk(0)partition(1)のドライブの"Microsoft Windows XP Professional"が起動しますが、rdisk(1)と修正すれば、"Microsoft Windows XP 仮1"が デフォルトとなります。 なお"Microsoft Windows XP Professional"の " " 内の文字は、OS選択画面に表示され る文字で自由に変更できます。 |
4-3 Primary masterハードディスクを外すリスク
・ デユアルブート環境では、Primary masterに接続されたハードディスクのC:ドライブに Windows98やMeがインストールされていて、WindowsXPは例えばD:ドライブなど他のドライ ブにインストールしていることが多いでしょう。 ・ Primary masterに接続されたハードディスクは、パソコンの起動の仕組み上重要です。 Primary masterのハードディスクの先頭ドライブである基本領域の先頭セクタには、電 源ONの後、最初にBIOSがファイルを読みにいくMBRがあります。 なお普通は、Primary masterにハードディスクを接続しますが、もしDVDなど接続されて いてHDDでなければ、IDE接続順の先頭ハードディスクが重要となります。 つまりBIOSにとって、ハードディスクは接続順、つまり物理的な順番であり、先頭ハー ドディスクの基本領域は常にC:ドライブとして、Windows上のドライブレターに関わり無い のです。 ・ Primary masterのハードディスクを取り外してしまえば、MBRを始め起動情報は一切無く なり、他のドライブにWindowsXPがあっても起動しません。 ・ WindowsXP CD-ROMの回復コンソールには、FIXMBR、FIXBOOT、BOOTCFGなどのコマ ンドが用意されており、MBRをはじめ起動プロセスに必要なファイルを修復できるのかもし れませんが、起動プロセスの修復はWindows98のように簡単ではないようです。 ・ WindowsXP CD-ROMを使用して、修復インストールすれば、先頭ドライブのMBRやブート セクタも修復できますが、WindowsXP自体は問題がないのに、修復インストールしたため に、不具合が発生する可能性もあります。 ・ WindowsXP CD-ROMで、仮に他のドライブに新規インストールして、起動プロセスのみ再 構築し、「boot.ini」ファイルを書き換え、元のドライブのWindowsXPが起動できれば、仮に 新規インストールしたものを削除してしまう方法が簡単です。 仮であれば、アプリケーションや個人設定の転送は不要であり、30分もかからずに仮の WindowsXPが起動でできます。 つまり、普通は新規インストールしたXPに、ドライバやアプリケーションをインストールし、 「ファイルと設定の転送ウィザード」で個人設定を転送し引っ越して、元のWindowsXPを消 すのでしょうが、何も元々トラブルのないWindowsXPを取り替える必要性はないのです。 |
4-4 新しいハードディスクに引越しする方法論
WindowsXPがインストールされているハードディスクを物理的に取り外すときは、引越しせざるを得ません。もちろんハードディスクの故障も同様です。 WindowsXPの再インストールと[ファイルと設定の転送ウィザード]の利用というセオリーどおりの手順は、長い間使い続けてきたパソコンでは面倒で難儀なことです。 単純にシングルブート環境で、C:ドライブ(Primary master)にWindowsXPが入っている一般的なケースとして、ハードディスクを交換するため引越しする手順として、どういう方法で移行するにしても、取り敢えず以下の準備はした方が良いでしょう。
自作パソコンのユーザーにとっては、ハードディスクの増設は手馴れたものでしょうから、まずPrimary
master以外のドライブとして接続し、先に領域の設定と作成した全てのドライブをNTFSファイルシステムでフォーマットしておくと良いでしょう。
<引越し方法1>
まず、boot.iniファイルを新しいHDDの基本領域から起動できるように修正します。
なお、先にXCOPYコマンドがフロッピーディスクに保存してあれば、A:に移動し、A:\>と表示されている状態から、次式を使っても同じことです。
上の図のようなドライブレターであれば、XCOPYは次の式になります。
その他の上の図の手順は、前述の3-(2)で説明しており、参照してください。 |