CPUの進化の歴史

2008年末、2009年始に、IntelのCore i7シリーズ、AMDのPhenomIIシリーズがリリースされ、いよいよ本格的なクアッドコアプロセッサの時代を迎えようとしていますが、ここに至るまでのシングルコアからデュアルコアに、さらにクアッドコアへと進化してきたIntelとAMDのCPUについて説明します。


なお、このファイルは「My Free-style PC」の「PC自作コーナー」のファイルです。
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 目 次

シングルコアCPUは、半導体の集積密度が18〜24か月で倍になるという「ムーアの法則」によって、CPUの処理能力は1年半に2倍となると信じられるようなテンポで動作クロックが向上してきた時代を経て、発熱のために動作クロックをこれ以上向上させることが困難となって、シングルコアCPUの限界に至っています。

 

 少し古い話となると記憶も薄れがちですが、筆者自身が使用してきたCPUのことは少しは覚えています。私が最初に買ったWindowsマシンは、NEC製でIntelのPentium75MHzが載っており、1年ぐらい後にIntelの125MHzのオーバードライブプロセッサを付けました。メーカー製のパソコンは、CPUが交換できないためです。

 自作を始めてからは、 初めはK6-266、K6-2 400、Athlon K7-750、Athlon K7-1.2GHzとAMD製を使ってきました。2003年の年始に、コンパクトなセカンドマシンを組立てましたが、熱対策が心配でCeleron2.2GHzを選び、6年ぶりにIntelのCPUを使いました。(「コンパクトPC自作Socket478」参照)

 その次の、メインマシンのアップグレードの時(2003年8月)は迷いましたが、FSB800MHzでデュアルチャネルDDR400メモリーが安定動作するPentium4 2.80CGHzにしました。Athlon XPも3000+以上は、デュアルチャネルをサポートしていますが、メモリーの相性が難しく、当時は安定動作するメモリーが滅多に無いという状況であったためです。(「PCアップグレードSocket478」参照)

 2005年始に、リビングで使うためにLGA775版Pentium4 540を使い、もう1台セカンドマシンを組み、メインマシンはAthlon 64 3500+にアップグレードしました。Pentium4かAthlon 64か、どちらか一方を選ぶのであれば迷うところでしょう。(「LGA775 Pentium4 PC自作」、「Socket939 Athlon64 PC自作」参照)

 なぜ速いCPUが良いのか一例を挙げます。Windows95の時代に、金沢将棋というソフトを購入しました。コンピュータ同士の最強レベルの対局モードで、Pentium75MHzでは、1時間で終局しなかったのがK6-266MHzでは30分ぐらい、Athlon750MHzでは10分ぐらい、Athlon1.2GHzでは5分ぐらいで対局を終えます。

 思考ルーチンに時間のかかる将棋ソフトは、CPUの性能アップがそのまま結果として現れますが、一般的には、CPUの性能アップが倍となれば、その半分の5割強のスピードアップが期待できます。新しいソフトはCPUの性能に期待して、どんどん重いソフトが開発されているのです。

 K6-400は、Windows98への移行時にバッチを当てないとトラブルが発生しましたが、この時はCPUのせいだけではなく、マザーボードのチップセットもこなれてなく、バッチを当ててもあまり安定してなかったと思います。

 しかしAthlonになってからは、AMD製だからといってトラブルとなることもなく安定して動いており、Athlonが実クロック表記でなく、Pentium4のクロック相当表記(例えばAthlon 64 3200+はPentium4 3.2GHzに相当)になって、ほぼ相当表記どおりの性能なのでしょう。

 AMDのシングルコアの最終形のAthlon64は、いち早く64ビット命令セットをサポートしていることが最大のセールスポイントです。

 これはOSであるWindowsの方も64ビット版のWindowsXPを使用し、64ビット命令セットをサポートするアプリケーションを使用しないと本来の真価は発揮できないのですが、2005年4月に、WindowsXP Pro x64 Editionがリリースされています。

 なお、既存のゲームなど32ビットアプリケーションのベンチマーク結果も上々であり、Athlon64は性能重視派に人気がありました。

 また、早い時期(2004年6月)からAthlon64全モデルは、拡張ウィルス防止機能(Enhanced Virus Protection)を搭載しており、WindowsXP SP2(ServicePack2)を適用したパソコンでは、特にバッファ・オーバーランによるコード実行などのウィルスの攻撃に対するシステムの耐性を高めるセキュリティ機能を実装しています。

 このAthlon64は、発売当初はSocket754版でしたが、すぐにSocket939版が主力となり、Socket939版のAthlon64は、2004年秋にWinchesterコアのAthlon64、2005年4月に、新たにSSE3をサポートした新型コアのSanDiegoコア(L2 1MB)とVeniceコア(L2 512KB)が投入され置き換わり、そして2006年5月に登場したSocketAM2版のAthlon64がAMDのシングルコアの最終形です。


 一方インテルのPentium4は、NetBurst マイクロアーキテクチャを採用しており、初期モデルはクロック表記は高くてもパフォーマンスはそれ程ではないということで不人気でしたが、2003年5月に、FSB 800MHzとHyper-Threadingテクノロジに対応したPentium 4が登場して人気を挽回しています。

 そして、2004年2月にSocket478版のままPrescottコアのプロセッサが登場し、その半年後に、LGA775版のPentium4がリリースされ、LGA775プラットフォームに移行しています。

 このLGA775プラットフォームへの移行は、CPUソケットがLGA775に変わるだけでなく、メモリーはDDR2メモリー、ビデオカードはPCI Express x16のサポートが基本となるため、移行当初はアップグレードするには敷居が高いという状況でした。

 そのため移行後しばらくは、LGA775プラットフォームでも、グラッフィックオンボードで既存のDDRメモリーが使えるマザーボードが売れ筋でした。

 また、PrescottコアのPentium4は、消費電力が多く発熱が大きいため、当初はあまり歓迎されてなく不人気でしたが、IntelがNorthwoodコアのPentium4の製造を終了した後、2005年に入って、ようやく売筋になったという感じです。

 LGA775版のPentium4は、プロセッサナンバを採用しており、2004年初夏に発売された初期モデルはプロセッサナンバの500番台シリーズですが、2004年末に500番台シリーズのナンバー末尾に「J」の付くモデルが、年が明けて2月末にL2キャッシュが2MBと必要以上に大盤振る舞いの600番台シリーズが、次いで6月に500番台シリーズのナンバー末尾が「1」となるモデルが登場しています。

 このように目まぐるしくPentium4がモデルを追加している要因は、Athlon 64で実装された機能を後追いで取り込んでいるためであり、「J」の付くモデルは、セキュリティ機能であるExecute Disable Bit機能(NX機能またはXD機能とも呼ばれます)が付加され、さらに、600番台シリーズは、Extended Memory 64 Technology (EMT64機能)とEnhanced Intel SpeedStep technology(EIST機能)が加わっています。

 EMT64機能はWindowsXP Pro x64 Editionのサポート、EIST機能はAthlon 64 のCool'n'Quietのように発熱や消費電力を抑える機能であり、機能的にAthlon 64と比較できるのはPentium4の600番台シリーズと500番台シリーズのナンバー末尾が「1」となるモデル以降です。

 そして平成2006年始に、既存のモデルを置き換える形で、65nmプロセス製造のPentium 4 661(3.60GHz)、651(3.40GHz)、641(3.20GHz)、631(3GHz)が登場し、ラインアップもすっきりしましたが、これがシングルコアの最終形となりました。

 シングルコアの時代を振り返ると、Windows95の時代に100MHz以下の動作クロックから、2000年夏にPentiumVとAthlonが肩を並べて1GHzの大台に乗り、最高クロックは2006年に、Pentium4 670の3.80GHzに至っています。

 このまま4GHz〜5GHzへと動作クロックを引き上げて、性能アップが図られるのではと思っていましたが、クロックの引き上げは発熱が高くなりすぎて限界に達しており、CPUが進化していくためにはコアを増やすこと、必然的にデュアルコアへ、さらにはクアッドコアなどマルチコアへと転進せざるを得なかったということです。

 なお、AMD製CPUは、2007年夏にデュアルコアのAthlon 64 X2 6400+が3.2GHzとなっていますが、シングルコアではAthlon 64 4000+が 2.6GHzどまりです。

 しかし、Pentium4のNetBurstマイクロアーキテクチャはクロックのインフレ、つまり実質以上の名目的な上昇のようなものであり、そのためAMDは、Athlon XP以降はPentium4 のクロック相当表記としてモデルナンバーを採用しています。

 いずれにしても、CPUの動作クロックは3GHz台まで、最新のデュアルコア・クアッドコアでも4GHzに達してなく、今後も4GHzを超えることは難しく、期待しない方がよいでしょう。

2 デュアルコア初期のCPUの進化

2005年6月、Intel、AMDともにデュアルコアCPUを投入し、CPUを性能面で総合的に比較して選ぶことが難しくなっています。

 このデュアルコアCPUの登場は、CPUの動作クロックを上げると発熱を抑えることができず、Thermal Design Power(TDP)が大幅に上昇するため、これまで続けてきたCPUの高クロック化によるパフォーマンスのアップが望めなくなった苦肉の策でもあるのです。

 Intelの最初のデュアルコアCPUは、Pentium Dシリーズ、AMDはAthlon64 X2シリーズですが、販売価格はPentium Dはメインストリーム向けの価格帯、Athlon64 X2はハイエンド向け価格帯と大きく異なっています。

 これはPentium Dシリーズが、Pentium D 840(3.2GHz)を筆頭に動作クロック3.2GHz〜2.8GHzで登場し、当時のシングルコアのPentium 4の動作クロック3.8GHz〜2.8GHzの下位モデルのクロックと同じであり、そのため比較的安価な価格設定で発売されたためです。


 一方、Athlon64 X2シリーズは、Athlon64 X2 4800+(2.4GHz、L2 1MBx2)、4600+(2.4GHz、L2 512KBx2)、4400+(2.2GHz、L2 1MBx2)、4200+(2.2GHz、L2 512KBx2)とモデルナンバーが示すように、シングルコアの最上位のAthlon64 4000+より全てパフォーマンスが良いということで、高価なCPUとして登場しました。

 すぐ8月に、Athlon64 X2 3800+が追加されましたが、それでも一般的なユーザーにはメインストリーム向けのCPUとしては買い難い価格でした。

 

 AMDでは、Athlon64 X2は、先進のダイレクトコネクト・アーキテクチャを採用する真のデュアルコアとアピールしています。

 これはPentium Dが、2つのコアのメモリとI/Oトラフィックを外部のメモリコントローラに依存しているのに対し、メモリコントローラが内蔵されているAthlon64 X2は、2つのコアがSystem Request Queueという高速な内部バスで接続されることからパフォーマンス的に有利なためです。

 当初のAthlon64 X2はSocket939版で登場しましたが、2006年5月にAMDは新型CPUソケットであるSocket AM2版プロセッサをリリースし、このSocket AM2プラットフォームは、Athlon 64 FX、デュアルコアのAthlon 64 X2、シングルコアのAthlon 64、Sempronと、当時のハイエンドからバリューPC向けまで全てのプロセッサをカバーするプラットフォームとなります。

 同時に既存のモデルもSocket AM2版の出荷が始まり、AMDのプライスリストを見ると、デュアルコアのAthlon 64 X2は4800+〜3800+まで全てのモデルでSocket AM2版が用意され、新たにAthlon 64 X2 5000+と4000+が追加されています。

 このSocket AM2プラットフォームへの移行は、メモリーが少し高速なDDR2メモリーのサポートへと変わること、単一のPCを複数の仮想マシンとして機能させることが可能なAMD Virtualizationが利用可能なことが主なメリットです。

3 Core2シリーズの登場のインパクト

2006年8月にIntelから、デュアルコアプロセッサのCore2シリーズが登場しています。
 開発コードネームConroeと呼ばれるCore2シリーズは、これまでのPentium4系のNetBurstアーキテクチャから、効率を良くすることで性能を大幅に向上させる「Coreアーキテクチャ」へと移行しています。

 インテルの説明では、このCoreアーキテクチャは、1クロックで同時に実効可能な命令を4つ(従来は3つまで)に増やしたこと、メモリーアクセス性能を向上させたこと、大型L2キャシュの2つのコアでの共有化、マルチメディアで使われているSSE命令の実行速度を速めたことなどが技術的な革新であり、要するにクロックを上げることより効率を良くすることで性能を向上させています。

 そしてインテルとしては、高性能なCPUの象徴として長年使ってきた「Pentium」というブランド名を、新しい「Core 2」という名前のブランドに置き換えており、まさに新世代のデュアルコアプロセッサとして、大幅に性能が向上しています。

 しかも「Core 2 Extreme X6800」はTDP(Thermal Design Power)75W、「Core 2 Duo」はTDP65Wと低消費電力に抑えられていることで、発売前から人気を集めていて、筆者も早速Core2 Duo E6600を使っています。(「Core2 Duo PC自作」参照)

Core 2 Duoは、当初モデルは全てFSB1066MHzであり、Core 2 Duo E6700(動作クロック2.66GHz、L2キャッシュ4MB)、E6600(2.40GHz、4MB)、E6400(2.13GHz、2MB)、E6300(1.86GHz、2MB)と4種類が発売されました。

 うちL2キャッシュ4MBの上位モデルは、特に高性能で人気があり、右の画像のE6600は発売当初4万円強と少し高価でした。

 しかし、そのパフォーマンスは、当時のハイエンド向けのPentium EEやAthlon FX62に匹敵するベンチマークを叩き出しており、発売以来一年間人気NO1のCPUでした。

 消費電力が抑えられていて性能が優れているCore2シリーズの発売は、CPUの勢力図を塗り替え、既存のCPUをシリーズごと一気に過去のものとしてしまうほどのエポックメーキングなことであり、IntelとAMDの立場は一気に逆転し、AMDはこれまで高値を維持してきたAthlon64 X2を大幅に値下げして対抗しています。

 このCore2シリーズの登場とAthlon64 X2の大幅な値下げにより、中々進まなかったデュアルコアCPUの普及が進みました。

 Core2シリーズの登場から1年経った2007年7月に、FSBを1333MHzに引き上げたCore 2 DuoE6850(3GHz、L2キャッシュ4MB)、E6750(2.66GHz、4MB)、E6550(2.33GHz、4MB)が比較的安い価格設定で登場して置き換わっています。

 そしてIntelのデュアルコアプロセッサは、2008年1月に製造プロセス45nm版に移行し、Core2 Duo E8500(3.16GHz、L2キャッシュ6MB)、E8400(3GHz、L2 6MB)、E8200(2.66GHz、L2 6MB)と、新しく8000番台となるCore2 Duoシリーズの3モデルが発売され、2008年8月に E8600(3.33GHz、L2 6MB)が追加され現在に至っています。

 製造プロセスの微細化は、同じサイズのチップでトランジスタ数を大幅に増やし、性能の向上が図れることがメリットであり、CPUの進化を支えるベースとなるものです。

 この45nm製造プロセスへの移行は、取り敢えずL2キャッシュを6MBと1.5倍に増やし性能を向上させたデュアルコアのCore2 Duoが先にリリースされましたが、後に新設計のクアッドコアプロセッサのリリースへと繋がっています。

 一方AMDのデュアルコアは、Core2 Duoに値下げで対抗するとともに、2007年2月にAthlonで64 X2 6000+を投入、2007年8月に6400+を投入とクロックアップを図ってきましたが、TDPが高いのにパフォーマンスで分が悪いため挽回できず、そのため後にデュアルコアは低消費電力版へと傾注していったのは必然の流れでしょう。

 デュアルコア化によるメリットは、例えばTV録画しながらエクセルを使う、ハードディスクのウイルスチェックをしながらWebサーフィンをする、音楽をダウンロードしながらデジカメ写真を編集するなど、マルチタスクに強いことがアピールされています。

 さらに一つのアプリケーションでも、マルチスレッド(複数の実行単位を同時実行)に対応したアプリケーションでは、デュアルコアのメリットも大きくなります。

 しかし、マルチスレッドに最適化したアプリケーションの登場は先のことで、例えば一つのアプリケーションで高負荷のかかる3Dゲームでは、シングルコアの高クロック、高性能プロセッサのベンチマークのスコアが勝ります。

 一気にCPUの勢力図を塗り替え、Athlon64 X2を劣勢に追い込んだCore2シリーズも、Coreアーキテクチャ、つまりアーキテクチャ(技術)が優秀ということがベースにあります。

 しかし、優秀なCore2シリーズも64ビットでの性能の向上が少ないという弱点があると言われており、AMDもIntelもクアッドコアプロセッサへの移行に既に注力しており、このクアッドコアでのアーキテクチャが争点となってきています。

4 クアッドコアへの移行の本格化

実は、クアッドコアプロセッサは意外と早くIntelが先行してリリースしており、2006年11月にハイエンド向けのCore 2 Extreme QX6700が発売され、年が明けて2007年1月にメインストリーム向けの「Core 2 Quad Q6600」が発売されています。

 当時はまだ、ようやくデュアルコアプロセッサが普及しつつあるという時期にあり、TDPが高くて高価なクアッドコアプロセッサは、一部のマニアを除いて、その必要性やメリットどころか関心さへ低いという状況でした。

 一方のAMDは、2007年秋になって、ネイティブクアッドコアとしてサーバ向けのクアッドコア「Quad-Core Opteron」の発売に続いて、「Phenom」のリリースに向けてイベントなどPRを行い、動画編集などでのクアッドコアのメリットをアピールして機運を盛り上げています。

 

 そしてAMDは、2007年11月下旬にSocketAM2+の「Spider(コードネーム)」プラットフォームを発表し、「Spider」プラットフォームのクアッドコア・プロセッサ「Phenom」シリーズが発売され、Intelより一足早く軸足をクアッドコアプロセッサに移しています。

 この「Spider」プラットフォームは、待望の「Phenom」プロセッサに加えて、AMD 790FXなどAMD7シリーズ・チップセットを搭載するマザーボードと、RADEON HD 3800シリーズのGPUを搭載するビデオカードと組み合わせて、すべてAMD製品で構成するプラットフォームの名称として付けられています。

 「Phenom」プロセッサは、Socket AM2+、HyperTransport3.0、DDR2-1066メモリーをサポートし、各コアごとの512KBのL2キャッシュに加えて共有L3キャッシュ2MBを搭載しており、初めから1つのダイに4基のCPUコアを内蔵することを前提に設計されていることから「真のクアッドコア」とアピールされています。

 しかし技術的には先進性があっても、「Phenom 9600」のパフォーマンスはIntelのクワッドコア「Core2 Quad Q6600(2.4GHz、4MBX2)」を超えていない性能であり、やや期待はずれという感じであり、年末に発売された倍率可変(「内部クロック=外部クロック×倍率」の倍率の方が変更できること)の「Phenom9600 BlackEdition」がマニアの関心を引いた程度です。

 「Spider」プラットフォームは、2006年7月に、AMDがATIを吸収合併することが発表されて以来目指してきた念願のAMD純正のプラットフォームの実現であり、「Phenom」シリーズは、これまでの「Athlon」というブランド名を使わずに登場した期待のプロセッサですが、スタート時点でパフォーマンス的に飛び抜けたモデルが提供されているわけではなく初めから苦戦です。

 そのため、発売当初から大きく値下がりをして、デュアルコアCPUの相場と変わらない価格で販売されるようになりましたが、TLBエラッタの問題が表面化し、その修正リビジョンのリリース待ちという雰囲気となりました。

 そして、2008年3月末に、TLBエラッタが修正された「Phenom9850 BlackEdition(2.5GHz、L2 512KB×4、L3 2MB」、「Phenom X4 9750 (2.4GHz、L2 512KB×4、L3 2MB)」、X4 9550(2.2GHz、L2 512KB×4、L3 2MB)の3モデルが順に発売されましたが、同時期に45nm版の「Core2 Quad」シリーズが発売され、時すでに遅しという感じです。

 さらに7月に最上位のX4 9950 BlackEdition(2.6GHz、L2 512KB×4、L3 2MB)が追加されており、BlackEditionモデルは、倍率可変であり、オーバークロックして使う楽しみがあります。

 しかし、定格クロックでのパフォーマンスは「Core2 Quad」シリーズに及ばず、発売当初のX4 9950 BlackEditionはTDP140Wで2008年9月下旬にTDP125W版が発売されたものの、それでもCore2 QuadよりTDPが高いことから敬遠され、マニア向けのモデルとなっています。

 クアッドコアのメリットは、AMDのイベントで動画のエンコードなどマルチメディア系の処理時間が短縮できることをアピールしており、AMDがクアッドコア移行に火を付けたという印象ですが、クアッドコアといえば世間では「Core2 Quad」に関心が移っています。

 そのためクアッドコアではAMDは大幅な値下げに追い込まれて苦戦ですが、5月にデュアルコア並みのTDP65Wと低消費電力版のクアッドコアとしてPhenom X4 9100e(1.8GHz、L2 512KB×4、L3 2MB)を投入し、続いて7月にX4 9150eとX4 9350e(2.0GHz、L2 512KB×4、L3 2MB)を発売し、動作クロックは低いもののTDP重視の発想が好感が持てます。

 またトリプルコア「Phenom X3」は、2008年4月下旬にPhenom X3 8750(2.4GHz、L2 512kB×3、L3 2MB)、X3 8650(2.3GHz、L2 512kB×3、L3 2MB)、X3 8450(2.1GHz、L2 512kB×3、L3 2MB)の3モデルが発売されています。

 「Phenom X3」の設計は「Phenom X4」と同じで、コアを1つ使っていないことは本来の性能を発揮していなくて非効率とも思えますが、コア3つ動作するものを低価格で提供しているという代物であり、いわばPhenom X4の副産物で、バーゲン品、アウトレット品というイメージです。

 そのため「Phenom X3」の動作クロックは、「Phenom X4」を上回ることができないようですが、同じ動作クロックで数千円安いコストパフォーマンスがメリットということでしょう。

 Phenom X3は、価格的な魅力に依存しているため、Phenom X4が値下げされると立ち位置が微妙であり、継続して安定して販売されるかどうかも不明ですが、2008年12月に追加されたTDP65Wの低消費電力版のPhenom X3 8450eは価格が安くて消費電力が低いことで価値がありそうです。

 一方Intelのクアッドコアプロセッサは、2007年初めに登場したときは10万円を超えていたFSB 1066MHzの「Core2 Quad Q6600(2.4GHz、4MBX2)」が2度にわたる大幅値下げにより、Phenomの発売時期には3万円前後とPhenomと同じ価格帯で購入できるようになり、むしろ新製品のPhenomより評判が良くなっています。

 そして2008年3月末に、製造プロセス45nm版FSB1333MHzの「Core2 Quad」シリーズが登場し、インテルのプラットフォームでも、いよいよクアッドコアの時代へと動き始めています。

 45nm版のCore2 Quadは、Q9550(動作クロック2.83GHz、L2キャッシュ 6MB×2)、Q9450(2.66GHz、L2 6MB×2)、Q9300(2.5GHz、L2 3MB×2)の3モデルが発売されていますが、発売当初は流通量が少なく品薄の状態でした。筆者も、ようやく2008年5月のゴールデンウィーク前に、Core2 Quad Q9450が入手できたためメインパソコンを組み直しています。(「Core2 Quad PC自作」参照)

 この3モデルのうちQ9450が一番人気でしたが、2008年8月に、Core2 Quad Q9650(3.0GHz、L2 6MB×2)、Q9400(2.66GHz、L2 3MB×2)が追加されたときにQ9450とQ9300は生産終了となり、Q9550の価格がQ9450と同じ価格帯の3万円台後半へと大幅に値下げされています。

 さらに8月末に、45nm版のクアッドコアとしては最下位モデルとなるCore2 Quad Q8200(2.33GHz、L2 2MB×2)がひっそりと発売され、12月にはQ8300(2.5GHz、L2 2MB×2)が、2009年4月にQ8400(2.66GHz、L2 2MB×2)発売されていますが、これらはAMDのPhenomの同価格帯での対抗馬ということでしょう。

 そして上から順に、Core2 Quad Q9650、Q9550、Q9400、Q8400というラインアップとなって現在に至っていますが、2009年1月のPhenom IIシリーズの発売に対抗して、このCore2 Quad シリーズを値下げしており、特に上位モデルのQ9650とQ9550は大幅な値下げにより人気が上がっています。

 Intelは、その少し前の2008年11月に、開発コードネーム「Nehalem」と呼ばれれきた「Nehalem」ファミリのハイエンド向けのクアッドコアプロセッサ「Bloomfield(開発コードネーム)」を「Core i7」というブランド名で投入し、このCore i7 920(2.66GHz、L3キャッシュ8MB、QPI 4.8GT/s)、940(2.93GHz、L3キャッシュ8MB、QPI 4.8GT/s)、965Extreem(3.20GHz、L3キャッシュ8MB、QPI 6.4GT/s)の3モデルを発売しています。

 そして2009年6月に、Core i7 950(3.06GHz、L3キャッシュ8MB、QPI 4.8GT/s)と、975Extreem(3.33GHz、L3キャッシュ8MB、QPI 6.4GT/s)の2モデルが追加され、Core i7 940と965Extreemは製造終了となって主役交代となっています。

 この「Core i7」シリーズは、2004年6月から4年半と長く使われてきたソケットLGA775ではなく、新しいLGA1366ソケットを採用しており、LGA775版のCPUと比べて一回り大きなサイズとなってピン数も多くなっており、技術的には1つのダイに4つのコアを内蔵する新設計のネイティブクアッドコアに進化し、メモリーコントローラをCPUに内臓することで性能向上を図っています。

 これまでIntel製CPUは、FSB(Front Side Buss)を介してCPU・チップセット・メモリー間を接続し、このFSBを引き上げることにより性能を向上させてきており、LGA775世代のCPUでは、FSB800MHz〜1066MHz〜1333MHz〜1600MHzと、より高いFSBをサポートするものがより高性能なCPUでした。

 しかし、「Core i7」シリーズでは、3チャネルのメモリーコントローラをCPUに内蔵することでメモリーを直結し、CPUとチップセット間のシステムバスはFSBではなくQPI(Quick Path Interconnect)インターフェイスに変更して帯域幅が倍増と強化されています。

 また「Core i7」シリーズのCPU内部のキャッシュ構造は、従来のL1+L2という2層構造から、各コア毎にL1キャッシュ32KB、L2キャッシュ256KBを持ち、共通の大容量のL3キャッシュを8MB有するという3層構造に変わっており、Pentium4で採用されていたHyper-Threadingが復活しています。

 その結果、アプリケーションによって得意、不得意があるとしても、最もクロックの低いCore i7 920でも、以前のハイエンド最上位のCore 2 Extreme QX9770を上回るベンチマークテストが多いというようにパフォーマンスは良好であり、AMD製CPUも含めて現状ではCore i7 975Extreemが最強です。

 しかし、LGA1366ソケット対応「Core i7」シリーズは、カテゴリとしてはハイエンド向けのCPUであり、高価なIntel X58チップセット搭載マザーボードとDDR3メモリーが必須となること、TDPが130Wと高いので冷却対策に特に注意が必要となることなど、一般ユーザーが使用する上では少しハードルが高くなっています。

 そして「Nehalem」ファミリのメインストリーム向けのクアッドコアCPU「Lynnfield(開発コードネーム)」は、2009年9月上旬に、LGA1156ソケット対応のCore i7とCore i5として、Core i7-870、i7-860、i5-750の3モデルが発売されています。

 また下位グレードのCPUも、2010年1月上旬に、開発コードネーム「Clarkdale」と呼ばれている初のGPU統合型のLGA1156ソケット対応デュアルコアCPUをCore i5とCore i3のブランド名で発売して、LGA1156ソケット対応のラインアップを完成させています。

 「Clarkdale」はデュアルコアのため時計の針が逆回りの印象がありますが、ビデオカードを使わないことを前提に選ぶ技術的にはGPU統合型の新設計のCPUであり、Hyper-Threadingにより4スレッドの処理が可能で純粋なデュアルコアよりマルチスレッドに強いことが救いでしょう。


 一方AMDも2009年1月に、「Dragon(コードネーム)」プラットフォームを発表し、このDragonプラットフォームのCPUとして45nm版の「PhenomII」シリーズのクアッドコアプロセッサをリリースし、そのPhenomII X4 940(3.0GHz)、 920(2.8GHz)は好調な滑り出しとAMD復活の救世主と期待されていました。

 PhenomII X4は、HTクロック1.8GHz、TOTALキャッシュ8MB(L2キャッシュ512KB×4、L3キャッシュ6MB)、TDP125Wというスペックであり、既存のPhenom X4 と比べると、PhenomII X4では45nm製造プロセスに移行したメリットを活かして、TDPを据え置いて動作クロックを引き上げ、キャッシュを倍増させています。

 特に、上位モデルの940は倍率可変のBlack Editionであり、オーバークロック耐性が高いことから人気があり、そのパフォーマンスは、IntelのCore i7シリーズには届かないものの、Core2 Quadシリーズとは肩を並べるところまで迫っています。

 また、「PhenomII」シリーズのソケットは、当初モデルはSocket AM2+に対応するCPUが先行して発売されましたが、本来は新ソケットSocket AM3に対応し、AMDとして初のDDR3メモリーをサポートするCPUとして開発されており、2009年2月下旬からSocket AM3対応の「PhenomII」がリリースされています。

 Socket AM3対応版は、2009年2月下旬にトリプルコアのPhenomII X3 720BE(動作クロック2.8GHz、L3キャッシュ 6MB、TDP95W)が、続いて翌週にクアッドコアのPhenom II X4 810(2.6GHz、L3 4MB、TDP95W)が発売されました。

 その後、2009年4月下旬に待望のフラッグシップモデルとして、Phenom II X4 955 BE(3.2GHz、L3 6MB、TDP125W)が発売され、そのパフォーマンスはCore i7 920には届かないものの迫り、Core2 Quad Q9650に並び、BlackEditionで倍率可変によるオーバークロック動作が可能なアドバンテージが魅力といったところでしょう。

 また6月に、TDP65Wの低消費電力版のクアッドコア X4 905e(2.5GHz、L3 6MB)とトリプルコア X3 705e(2.5GHz、L3 6MB)が発売され、続いてTDP95Wの X4 945(3.0GHz、L3 6MB)が発売されてSocket AM3版PhenomIIのラインアップが完成しています。

 AMDは、Core2 Quadシリーズの値下げに対抗して、発売後間もない「PhenomII」シリーズを異例の同じ1月中に価格改定して値下げしており、その後Intelは、2009年2月にはTDP65Wの低消費電力版のCore2 Quad Q9550s、Q9400s、Q8300sを発売し、AMDは、この2月下旬から初夏にかけて本命のSocket AM3対応のクアッドコアPhenomII X4 810、X4 955BE、X4 905e、X4 945とトリプルコアPhenomII X3 720BE、X3 705eを順次投入し、Socket AM3対応CPUのラインアップを完成させています。

 そして2009年8月中旬に、Phenom IIシリーズの最上位モデルとして、Phenom II X4 965 Black Edition(3.4GHz、L3 6MB)を追加し、下位グレードには、2009年9月中旬にAMDがL3キャシュを省くことで価格を抑えたSocketAM3対応プロセッサをAthlonIIブランドで発売し、低価格化なクアッドコア、デュアルコアのラインアップを強化しています。

 こうした流れの中で、IntelとAMDのメインストリーム向けのCPUの覇権争いは、2009年秋に発売されたIntelのクアッドコア「Lynnfield」のCore i7、Core i5以降はIntel優勢となっています。


 なお、現時点でパソコンを自作するためにCPUを購入する場合は、「自作パーツの選び方 CPU」を参考としてください。

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